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農福連携とは

2022.10.26

農業と福祉が連携する共生社会推進を図る
「農福連携」とは?

岐阜県では、農政部、健康福祉部、一般社団法人岐阜県農畜産公社(ぎふアグリチャレンジ支援センター農福連携推進室)が中心となり、各部局が連携して、農福連携の推進に取り組んでいます。

この記事では、農福連携についての解説のほか、実際の取組事例をご紹介します。

農福連携について

「農業」と「福祉」が連携する農福連携は、具体的には、障がいのある方が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みのことを指します。
農福連携に取り組むことで、障がいのある方の就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性もあると期待されています。

農福連携推進の取組みとして、岐阜県では主に、次の事業を行っています。
農作業受・委託のマッチング支援、専門家の派遣、各種助成事業、啓蒙チラシやカタログの作成、研修会やマルシェの開催など。

岐阜県の農福連携に関するご相談は、農業と福祉の専任スタッフを配置した(一社)岐阜県農畜産公社 ぎふアグリチャレンジ支援センター 農福連携推進室(TEL058-215-1503)にお願いします。

事例 「いぶき福祉会(岐阜市)」

1995年に誕生し、障がいのある方の活動や暮らしを広げることに取り組む『いぶき福祉会』。特別支援学校を卒業したばかりの人から80歳近い人まで、150名を越える障がいのある方たちが利用しています。

いぶき福祉会では、利用者たちの仕事づくりのために、米や野菜、お茶などを栽培しており、障がいのある方たちが苗を植える作業や、収穫、検品・梱包などの大事な作業を行っています。
加えて、すべて農薬を使わないこと、化学肥料や有機肥料を使用しないことを前提とした自然栽培がこだわり。現在、いぶき福祉会には茶園、野菜畑、田んぼという3つの農地がありますが、今回は秋の茶畑に案内していただきました。

いぶき福祉会のお茶づくり

伊吹山の東側に位置する、岐阜県揖斐川町春日の上ヶ流(かみがれ)地区。ここでは750年以上も前から、品種改良されていない在来種が栽培されています。地元ではこれを「天空の古来茶」と呼び、今も大切に守り続けています。

標高300mという、お茶の栽培に適した高地に位置する天空の茶園は「岐阜のマチュピチュ」と呼ばれており、いぶき福祉会の茶畑も、その中にあります。

いぶき福祉会がお茶づくりに着手したのは、耕作放棄地になっていた知り合いの茶畑を活用できないかと思い立ったのが始まりでした。
奈良県で同じように自然栽培に取り組む健一自然農園さんに出会ったことで、荒れた茶畑を活かす、三年番茶の作り方を教えてもらい、商品化できるまでになりました。

さらに、ほかの地元の地主さんからも「うちの畑も手入れしてもらえないか」との声があり、栽培方法を一から教えてもらい、煎茶の栽培が可能になりました。

現在、いぶき福祉会では、三年熟成番茶、煎茶、ほうじ茶、紅茶やフレーバーティーなど、さまざまな種類のお茶を作っています。お茶の種類によって茶葉を収穫する時期、製茶する時期を変え、四季を通じてお茶を作っています。

中でも、看板商品の「いび春日三年熟成番茶」は、3年以上生育したお茶の木の茎や葉、枝を使ったお茶です。

一般的な煎茶などの日本茶は、お茶の木の新芽を摘採して使用しますが、三年熟成番茶は、新芽を使いません。3年に一度、枝ごと刈り取り、茎、枝、葉をそれぞれ薪火で炒って作ります。さらにそれらを半年以上寝かせてから、さらに薪火で炒り、香ばしいお茶に仕上げたこだわりのお茶です。

緑茶の葉に含まれるカフェインやタンニンという成分は、身体を冷やすなど少し刺激が強い作用がありますが、三年熟成番茶は、焙煎することでそれらの成分が抜けてすっきりと甘く感じられるのが特徴です。

お茶づくりを支えるのは、仲間たち

いぶき福祉会の茶葉栽培は、農薬・肥料不使用。そのため、茶の成長に支障がないよう、小まめに茶樹にとって最高の環境を保持してあげることが必要です。
中でも欠かせない作業が草引き。雑草が生えると、茶葉がまっすぐ伸びるのを邪魔してしまったり、隣接する地域の方の茶畑に雑草の胞子や根茎から繁殖してしまったりと、さまざまな弊害が出てしまうのです。

そのため、雨が降らない限り、毎日片道1時間ほどをかけて手入れに通います。そして雑草はできる限り小まめに刈り取り、茶園のコンディションを整えます。
この大切な作業は、すべて仲間の皆さんの仕事。

余分な雑草を引いたり、雑草が生えにくくなるように土の上に茅(かや)を敷いたり、その茅を刈って運んだり、茅と土が馴染むように踏みこんだり、みんながそれぞれの役割にやりがいを持って取り組んでいます。

そのほかにも、春には新茶を摘採したり、

煎茶の場合は、機械では取り除ききれなかった緑茶の枝を取り除いたり、

お茶を計量して梱包したり。
まさに障がいのある方が生きがいを持って社会に参画し、収穫、検品・梱包などの大事な作業を行うことで、農薬・化学肥料不使用でも、高品質で美味しいお茶を生み出しているのです。

まとめ

後継者不足で耕作放棄地が増える日本の農業に対する問題。「農福連携」では、障がいのある方が活躍することを通じて、自信や生きがいを持って社会参画を実現していることはもちろん、農業の問題も一同に解決へと向かう取り組みということを事例からも感じていただけると思います。

ギフツプレミアム公式通販サイトでも、いぶき福祉会の「いび春日三年熟成番茶」などのお茶製品を販売しています。ぜひチェックしてみてくださいね。